夕学レポート
2007年02月07日
「個人の可能性を信じる」 奥谷禮子さん
奥谷さんの夕学講演の当日、衆議院の予算委員会で奥谷さんの発言を巡るちょっとした議論があったそうです。
1月末に発行されたある雑誌に掲載された奥谷さんのインタビュー記事が問題とされていたとのこと。奥谷さんが労働政策審議会の委員をやっていることもあって、奥谷さんの意見が政府の大多数の考え方を代弁しているのではないかということだったそうです。
民主党の某委員が「あまりの暴言だ」と息巻いた内容は、実は本日の奥谷さんの講演内容とほとんど同じもののようです。
夕学をお聞きになった方はよくお分かりだと思いますが、奥谷さんは、スタンスが明確で、歯に衣着せぬ物言いをされる方であることは間違いありません。
では、はたして夕学講演の内容は「許すまじき暴言」なのか、それとも旗幟鮮明な考え方をする人の「ひとつの見解」なのか、どのように感じられたでしょうか。
奥谷さんの意見を、思い切って要約すれば、「個人の可能性を信じる」ということです。
個人が自由な競争環境下で、健全な競争を展開することで、多様な価値観をもった個人が、それぞれの道でセルフマネジメントを行い、成長できるはずだと考えています。
そこでは、自由な競争を阻害する規制はもちろんのこと、保護や監督は極力省くべきで、努力を怠る者は、企業であれ、個人であれ、自然と淘汰される。
自分で自分の道は切り開けということでしょうか。
「保護や監督は極力省こう」という主張が、具体的な政策提言に置き換わると、
「労働基準法は必要ない」
「祝日もなくすべきだ」
という過激な意見になり、それが「あまりの暴言だ」ということになるわけですが、奥谷さんがこれらの発言を政治的な思惑で発しているのではなく、自ら道を切り開いてきたパイオニアとしての自信を拠り所とする「信念」に基づいてのものだということは、きょうの講演を聴いてよくわかりました。
この「信念」が生まれる原点は、25年前のザ・アール起業時の原体験に遡るようです。
日本航空の官僚体質に嫌気がさしていた若き日の奥谷さんは、空港のVIPサービス担当として多くの社長達と知り合います。多忙な生活に愚痴を溢しながらも、生き生きと働く彼らに触発されて、「自分も社長になろう」と立ち上げたのがザ・アールだそうです。
「R」という文字は、「Revolution」「Renaissance」などの言葉にちなんだもので「女性中心に世の中を変える」という志を示す社名だったそうです。
男女雇用機会均等法施行前で、まだベンチャーという言葉もなかった時代。ビジネス=男という概念で固められた世界に飛び込んだ異邦人のごとく、苦労の連続でした。
特に、前例がないことを盾にして、認可を下ろさない役所との対決には多大なエネルギーを要したようです。
「役所は弱い者、新参者に冷たい」
「時代の変化に法律が追いつかず、未整備のまま」
「法には穴があり、やろうと思えばやれる」
「実績さえあげれば社会は評価してくれる」
「価格競争に陥らない付加価値創出が競争力の源泉である」
これらの原体験を通して形成されたのが「どこまでの個人の可能性を信じる」という信念です。
もちろん、奥谷さんの意見には、勝ち組のための論理、強者の論理という批判もあって、見解が分かれるところです。例えば先日も佐高信さんとは正反対の立場・意見と言えるでしょう。
どちらの意見に賛同するかは、皆さん自身の判断が試されるところです。
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