夕学レポート
2005年04月22日
時代を越えた普遍の真理を学ぶ 「変貌するビジネスシステム」加護野忠男さん
経営学者の中で“西の重鎮”と称される加護野先生。けっして難しい言葉は使わず、ユーモアたっぷりに、絶妙の間を取った語りには、聴く人を心地よく納得させる深さを感じます。
「競争原理の導入」「イノベーションの創出」「オープンネットワーク」など、多くの企業がこぞって取り組む経営コンセプトがあります。そして、それらを持続可能なシステムとして構築するために、さまざまなアプローチがなされています。加護野先生は、先端的ビジネスコンセプトを根づかせるためのヒントは日本の伝統システムの中に織り込まれていると主張します。
京都の特徴である閉鎖的・排他的な文化風土が、実は京都企業特有の革新性を産み出したのではないかという解釈。灘の酒蔵と丹波杜氏の関係はコア技術の外部化による品質維持・技能継承システムと理解できるという解説。東大阪の中小製造業には、力のない企業がつぶれる一方で、細胞分裂のように新興企業が発生する健全な競争原理が機能してきたという認識。いずれも、それぞれの地域の文化特性を土壌にして育った伝統システムですが、見方を変えれば、多くの大企業が必死で模索している先端ビジネスコンセプトの成功事例だというわけです。
伝統システムの中から先端システムに活用できるヒントを見つけ出すために、“夜学”の効用を説かれたことも夕学担当者としては嬉しいことでした。松下幸之助、本田宗一郎、中内功に共通したことは、起業後に夜間大学で学んだことだそうです。加護野先生は、「経営学の授業は全部忘れたが、日本国憲法に授業が面白かった」という中内さんの言葉を紹介しながら、「彼らが夜学で学んだことは、実務知識や専門技能ではなく、基礎科学や古典を通して、時代を越えて生き残った普遍の真理を学び取る力だったのではないか」と推察しています。
「夕学五十講」は、“時代の潮流と深層を読み解く”ことをコンセプトにしていますので、基礎科学や古典をテーマにすることはありません。しかし経営やビジネスのみならず、政治、文化、スポーツなど各領域の第一線で活躍する識者の言葉や論理を通して、業種・業界を越えた共通原理のようなものを掴んでもらえるのではないでしょうか。
「今度は、経営学者じゃあなくて、文学や歴史の先生を呼んだらどうですか」
講演終了後、愉快にそうお話になりながらホテルに帰っていかれました。
京都の革新性については「むろまち」という小説がよいそうです。
古典を通して普遍の真理を学ぼうという方には、講演で紹介された次の2冊はいかがでしょうか。「>文明論の概略を読む」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
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