夕学レポート
2010年04月20日
パトスの論理 村上憲郎
エグゼクティブを専門とするヘッドハンター達の間には、「外資系企業の日本法人トップ候補者」というリストがあるという。
およそ200名程度と言われるリストメンバーの中で、90年代~2000年代初頭にかけて、常に上位に名前があった人物が何人かいる。
例えば、前ライブドア社長の平松康三さん。アメックス、AOL、インテュイット等々のトップを歴任した。平松さんは、夕学にも登壇され、私は、その時の印象を「熱きストラテジスト」というタイトルでブログに書いた。
村上憲郎さんも、そのリスト上位者のひとりであった。DEC社を皮切りに、Docent社、Northern Telecom社の日本での経営を担ってきた。
平松さん、村上さん共に全共闘世代。学生時代は勉学よりも学生運動に熱中し、若くして挫折を経験した経歴も似ている。
平松さんは、「クビを宣告された日に泥棒に入られた」という貴重?な経験を講演の掴みネタにしているが、村上さんの人生も、そう大きくは違わないのではないか。
波瀾万丈の人生を、したたかに生き抜いた人である。
二人には、若い時代の挫折以外にも共通点がある。
ひとつは、フィールドは変わっても、常に戦い続けてきた人であること。
もう一つは、戦いを支えるパッションを持ち続けている人であること。
二人とも、年齢に似合わず?ゴツゴツして、エネルギッシュで、そして何より明るい。
さて、村上さんの講演は、1.世界で戦うにあたっての「時代・環境分析」、2.村上流の世界で戦うための「要諦」、3.ご自身を支えているパトス(熱情)の三部構成であった。
前の二つは、是非、村上さんの著書『『村上式シンプル仕事術』>『村上式シンプル英語勉強法』を読んでいただきたい。
本ブログでは、時間が足りなかったことと、ご自身としても多少照れもあったのか、サラリと流して話されたパトス(熱情)の話を少し調べた(ググった)のでご紹介したい。
「力及ばずして倒れることを辞さないが、力尽くさずして挫けることを拒否する」
これは、東大闘争の際に安田講堂に立て籠もった学生がカベに書き残した落書きだという。当時の若者にとっては、あまりに有名な言葉であったとのこと。
「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく甲斐はない」
ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの小説主人公である、探偵フィリップ・マーロウの決めゼリフである。
村上さんは、高倉健の『昭和残侠伝』の画像をバックに紹介した。学生運動の闘士達が好んでみた映画だったと聞く。
「我らはいつも新鮮な旅人 遠くまで行くんだ!!」
言葉の原典は、長田弘という詩人の詩集タイトルにあるようだ。村上さんは、キューブリックの『2010年宇宙の旅』をバックの紹介した。
これまた、学生運動華やかりし頃の映画である。
安田講堂のカベに、名もなき学生が、この言葉を刻んだ時、村上さんも京大闘争に身を投じる学生だったという。百万遍交差点を封鎖したバリケードの中で、若き日の村上青年は、同じパッションを胸に刻んでいたのかもしれない。
戦う理由も、戦う相手も、戦いのフィールドも変わったが、戦い続けるパッションは変わらない。
それが「世界で戦う」人間の実像である。
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