夕学レポート
2010年12月08日
「人間性」という強み 杉山愛さん
スポーツや芸術のように、限られた時間にエネルギーを凝縮して注ぎ込むことを求められる世界で長く生きてきた人には、独特の緊張感のようなものが漂っていることが多い。
分かり易い例で言えば、イチローが醸し出す求道者のような雰囲気である。
夕学に来ていただいた井村雅代さん(シンクロコーチ)、宇津木妙子さん(女子ソフトボール監督)、そして最近では、スピードスケートの清水宏保さんにもそれを感じた。
にこやかな表情の中にも、射抜くような鋭さを感知し、緊張したものだ。
杉山愛さんには、それをまったく感じない。
初対面の我々にも、トレードマークでもある笑顔を振りまき、壁を作らない
相手の気持ちを瞬時に掴み、的確な対応を返してくれる。
「この人といつまでも話していたい」「一緒に何かをしたい」
そう思わせるような、懐の深さがある。
きょうのお相手役を務めていただいた田中・ウルヴェ・京さんが、杉山さんを知るスポーツ関係者に、その人となりをヒアリングしたところ、異口同音に話してくれたのが、「人間性の良さ」であったという。
スポーツ選手としては、異質とも思える「特性」は、実は、杉山愛というテニスプレイヤーの基本部分を形成する大きな原動力にもなっていたようだ。
杉山さんは、グランドスラムのシングルス連続出場62回というギネスレコードを持つ。足かけ16年間に渡る記録である。
その間、大きなケガ・病気をすることなくコンディションを維持し続けるということは並大抵なことではない。地味なルーティンを黙々と繰り返すことでもあるからだ。
杉山さんの「フラットな人間性」は、人の見えないところで、コツコツと何かを積み上げることへの忍耐を可能にしたのではないか。
彼女の「人間的な魅力」は、努力して培った語学力と相まって、海外生活への順応力を高めることとなった。
チーム愛のスタッフも、外国人選手、海外のプレスも、杉山愛の笑顔と人間性を愛した。
ダブルスで発揮された無類の強さも、杉山さんの「人間力」を抜きには語れないであろう。個性の強い外国人選手も、杉山さんの懐に抱かれて、なお一層輝きを増したのであろう。
「人間性」という彼女の強みが、17年間のプロ生活を支えた、そして、その強みは、引退後のこれからの生活に、なお一層必要とされるものである。
杉山さんの前途は間違いなく明るい。
追記
この講演には45件の「明日への一言」が寄せられました。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/12月-7日-杉山-愛/
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