夕学レポート
2011年07月05日
よりよく生きるための自己表現 佐藤綾子さん
「自己表現の科学」
佐藤綾子氏の提唱するパフォーマンス学を簡潔に表すとこう言える。
表情、声、言葉、立ち居振る舞いといった自己表現の諸要素を科学的に分析し、根拠にもとづいて最も効果的な表現方法を提示することを目指している。
佐藤氏は、研究対象とする数十分の自己表現(例えばオバマ大統領の就任演説)を言葉、表情筋の動き、視線の動き等に要素毎に分けて、秒単位(時にはコンマ単位)でコード表に落とし、どの要素を、どの程度、どういう組み合わせで使うことで、人を感動させたのかを分析する。
「私の話は一分間に266文字です」
「好感がもてる人かどうかの60%は顔の表情で決まります」
「人の感情は2秒で読み取れます」
自己表現のありようを極めて具体的に語れるのも、それが自らの研究調査に基づいた根拠のある数字だからである。
サウンドバイト=分かりやすくて響きがよく、覚えやすい言葉を使うことで聴衆を掴む
例:「自民党をぶっ壊す」
連辞=似た意味、似た響きの言葉を連呼することで聴衆を掴む
例:「恐れず、ひるまず、とらわれず」
ブリッジング=聴き手の身近な話題を投げかけることで、相手との間に橋をかける
例:「湯布院とかけて自民党と解く。そのこころは、先が見えない」
小泉純一郎、進次郎父子という天才演説家の例を使いながら説明してくれたメソッドは、効果と使い方を憶えれば、誰にでも再現性がある。
自己表現が科学である所以である。
「巧言令色鮮し仁」「剛毅木訥仁に近し」(いずれも論語の一節)
これが、長い間日本人の(特に男性の)自己表現の美徳とされてきた。
背景には、同質化社会の特徴である「高コンテキスト文化」があったと佐藤氏は言う。
しかし、いまや、これらは美徳ではなく、克服すべき課題になった。
「表現されない実力は、無いも同じ」時代になった。
とはいえ、必要に迫られて身につける自己表現は窮屈過ぎないか。
そんな思いが頭をよぎることを見透かしていたかのように、佐藤氏はパフォーマンス学の定義を続けてくれた。
「日常生活における個の善生表現である」
私なりに解釈すれば、「よりよく生きるため」というとことだろうか。
アランの『幸福論』には、「人は楽しいから笑うのではない、笑うから幸福になれる」という一節があるという。
自己表現とは、他者のためであると同時に、自分のためでもあるのだ。
良い表情の人の方が、病気治癒力が高い(ナチュラルキラーセル)
良い表情をすることで、良い感覚が蘇ってくる(顔面フィードバック)
といった理論もあるという。
かつての夕学に登壇された村上和雄さん(筑波大名誉教授)の言葉を借りれば、自己表現によって、眠っていた遺伝子のスイッチをオンにする効果があるのかもしれない。
自己表現は、自分を元気にするためにもある。
この講演に寄せられた「明日への一言」はこちらです。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/7月5日-佐藤-綾子/
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