夕学レポート
2013年04月19日
生活情報のプラットフォームをめざす 森川亮さん
LINE株式会社社長の森川亮さんに同行してこられた同社広報の女性は、LINE社の母体のひとつ旧ライブドア社のご出身だという。美人広報として有名になった某女史の後任として入社されたとか。
考えてみると夕学はライブドアと縁がある。全盛時のホリエモン社長も、再建を担った平松庚三社長も夕学に登壇いただいた。
平松さんが講演の中で「ライブドアには高い技術をもったエンジニアが沢山残っている」と強調されていたことを憶えている。テクノロジーカンパニーとしてわが社の将来は明るいと。
LINEの開発に旧ライブドア社員がどこまで関わったのかは知らないが、ずっと残ってきた人達は、統合されてホントによかったと思っている、というのがその方の弁。人生とはわからないものだ。
さて、森川社長の話を聞くと、LINEの成功は、3つのパラダイムシフトを的確に捉えたことにあるようだ。
1)PCからスマホへ
スマホは、PCと距離があった層から瞬く間に広がり、幅広い年代に満遍なく浸透した。「For Ordinary People」時代の生活密着型のネットメディアと言える。
ブラウザーではなく、あくまでもアプリに特化したというのも慧眼であった。
普通の人は、IDやパスワードは煩わしい、電車の中でつながりにくいと嫌われる。LINEはそういったマイナスを解消したコミュニケーションツールとして登場した。
2)オープンからクローズド&プライベートへ
ネットコミュケーションは、世界の誰とでも瞬時に「つながる」ことが何よりの魅力であった。たとえSNSのような半クローズドコミュニティであっても、その基本方向は変わらない。「つながる」ことに価値があった。
LINEは「つながる」ことではなく、すでに形成された「つながり」に載せるものに価値を見いだそうとした。それは人間の生活そのものである。
後述するようにLINEが最初から狙っていたのは、ここにあったようだ。
3)インフォメーションからエモーションへ
昨年夕学に登壇した武田隆氏は、ネット社会のコミュニケーションニーズを「エモーション」と読んだ。彼は企業コミュティというウォームでウェットな世界で「心あたたまる関係」として具現化したが、LINEは、もっとストレートに即物的に勝負した。
愉快に楽しく盛り上がれることがLINE流の「エモーション」であろう。スタンプという発想は、デコメや絵文字の延長線上から生まれた。
「スマホ時代の新しいコミュニケーションツールをつくる」
というLINEのスタート時の戦略は見事に成功した。
全世界で1億4千万人。日本で4500万人のユーザーを2年弱で獲得したスピードには驚くしかない。
LINEのネクストステージ戦略は、コミュニケーションツールから「プラットフォーム」へのシフトである。
人間関係という「つながり」の上にのっける生活情報の共通基盤になろうということだ。
考えてみれば、あらゆる情報のプラットフォームとして、人間関係ほど信頼出来る基盤はない。求める情報が生活密着でプライベートであればあるほど、そのウェイトは高くなる。
これは、いつの時代も、世界のどこであっても、普遍的な真理である。
LINEは、個々のリアルな人間関係の相似形をスマホに再構築することを、最初から狙っていたようだ。電話帳に目をつけたのは見事としか言いようがない。そこにはすでに形成されたパーソナルな「つながり」がデジタル情報の塊として存在していたのだから。
森川さんは、LINEはまだマネタイズの段階ではないという。マネタイズの試行はたくさんしているけれど、いまはユーザーの拡大こそがなにより重要だという。
人間関係という「つながり」の上にのっける生活情報の「プラットフォーム」を目指す以上、ユーザーが増えれば増えるほど価値は上がる。台湾のように、国民の2分の一が使うプラットフォームになれば、その上に形成される生活情報はいくらでもある。マネタイズを本格化するのはその段階ということだろう。
LINEの眼前には広大なブルーオーシャンが広がっている。
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