夕学レポート
2013年10月29日
長期投資とは成熟経済の生き様である 澤上篤人さん
長期投資の実践家であり熱き啓蒙家、さわかみ投信の澤上篤人会長。
2006年5月以来2度目の夕学登壇になる。
いまにして思えば、前回はさわかみファンドの認知が一気に広まっていた頃であった。
2003年5月に400億円だった総資産額は、3年間で5倍近くにまで増えて、1,920億円にまで急増していた。
現時点(2013年10月29日)の総資産額は3000億円強。その間リーマンショック、東日本大震災、民主党政権による政治経済迷走等が連続して起こり、資産運用環境は順調ではなかったことを考えると、ペースは落ちたとはいえ着実に浸透しているといえるかもしれない。
なによりも澤上さんの話を聞くと、私たちの資産運用行動が、日本経済のありように繋がっているだな、ということがストンと腹に落ちていくのが不思議である。
「最初は恐い話からはじめます」
「1975年に23%を付けたものが、バブル崩壊時には15%、それがいま(2013年)ついに0%を割ろうとしている」
澤上さんが持ち出したのは、日本の家計貯蓄率の話である。
我が国の政府債務が対GDP比で200%に達するにも関わらず財政破綻が起きないのは、債務の多くを国内の金融資産(約1500兆円)が支えているからだと言われる。その半分を家庭の貯蓄が占めている。その額約790兆円。
「このペースだと、まもなく預貯金を食いつぶす時代に入り、30年もすればゼロになるだろう。その時に何が起きるか」
とはいえ怯えてはいけない。成熟時代に合わせた、お金の遣い方を身につけることで、将来を変えることができる。790兆円という金額はGDPの1.7倍の規模である。
もし仮に、国民全員がひとりにつき10万円預貯金をくずして、消費に回せば12兆円の実需が生まれる。政府の景気対策など比較にならないインパクトである。
つまり、それだけの潜在価値を持っているのだから上手く活用するべきだ、という問題意識が、澤上流長期投資論のおおもとにある。
高度成長期と異なって、成熟時代は、意識をしてお金を使わないと経済はシュリンクしていく。かといって人々の消費を刺激するような欲求が存在しないのも成熟時代である。
だとすれば、預けっぱなしの預貯金のいくばくかを、「意識して」長期投資に振り向ければ、お金を使うことと同じ効果が期待できる。
生活者として、日本人として、ひとりの人間として「良い会社」と思える企業を見つけ出し、長期保有を前提とした株主になって応援する。それもお金を使うことに他ならない、というわけである。
投資すべき会社さえ決めれば、長期投資の原則はいたってシンプル。
景気の波に合わせて、長期の売り買いを淡々と繰り返せばよい。ただし買い時と売り時が世の大勢と真逆であることを除けば。
大勢と真逆のことをやるには信念が必要である。
応援したいと思えるような良い会社でなければ続かないし、長期投資に社会的な意味を見いだせなければ不安にさいなまれる。
澤上さんの考え方は次ようなものだ。
気にいった果樹を育て、成長したあかつきに、美味しい果実を収穫する。たくさん育てれば緑が増えて環境がよくなる。環境がよければ多くの人が集ってくる。
同じように、惚れた会社を育て、成長することで経済的リターンを得られる。良い会社が成長すれば経済が活性化する、雇用も増えるし社会の質もよくなる。
カネ儲けのために投資をしようという人には向かない。投資を通じて社会に関わっていこうという志の有無が長期投資への適性を決めるのかもしれない。
さて、では「良い会社」とはどんな会社だろうか。
講演では、澤上流良い会社の見つけ方を紹介してくれたが、あれで決めるのは勇気がいる。
参考になるとすれば、さわかみファンドはどこに投資をしているのか、という情報ではないだろうか。
調べたらWEBでしっかりと公開されていた。
さわかみファンドの株式組入上位20銘柄
なるほど、そうだろうなという企業が並んでいる。
経営学者やコンサルタントが選んでもそれほど変わらないのではないか。ものづくりや現場力を評価されている会社ばかりだ。
ただし、これらの企業の株式を長期で保有するだけの余裕資産を持っている人は少ない。
「長期投資の意義はわかるけれど、億単位の資産を持っている人のハナシでしょ」
そんな声が聞こえてきそうだ。
そんな人にこそさわかみ投信の出番。毎月1万円から積み立て投資が出来る。
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