夕学レポート
2014年06月10日
和食とはうまみ、京料理とは寸法 菊乃井主人 村田吉弘さん
京都の老舗料亭 菊乃井三代目主人 村田吉弘さん。料理人として、料亭主人として、京都人として、日本の将来を考えるひとりの大人として、そして日本人として語ってくださいました。和食とは何か、日本料理とは何か、京料理とは何か、文化とは何か。
「和食 日本人の伝統的な食文化」は昨年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録され話題となりました。村田さんは理事長を務めるNPO法人日本料理アカデミーとともにその仕掛け人・発起人でいらっしゃいます。
では、和食がユネスコに登録されたというのはどういうことでしょうか。
そして、和食とは、日本料理とは、京料理とは何でしょうか。
これが村田さんのメッセージでもありました。
村田さんによると、日本料理とは、うまみの料理だそうです。
母乳は糖、脂質、うまみ成分でできています。食も同じです。パン、お米、小麦、まず世界のどこでも糖を食べます。そして特筆すべきは他の国々の料理は脂質が中心であるのに対し、日本は世界で唯一、うまみ成分を中心に料理があることです。 うまみといえば “だし“です。
おいしいだけでなくこの”だし”は0キロカロリー。コンソメなり鶏だしなりだしにあたるものはどれも高カロリーです。うまみ成分には心を落ち着かせる効果もあります。、和食とはうまみの料理、そしてうまみが、世界でもまれな低カロリーで栄養バランスのよい健康的な料理を実現しているのです。
次にでは、京料理とは何でしょうか。村田さんによると京料理とは「寸法」です。
料理の寸法は、味がいちばんわかる、口中体積に合わせられています。
お酒、お茶一服、主菓子、刺身、お汁。それらをいただく、おちょこ、お茶碗、銘々皿、向付けのお皿、お椀。寸法には理があり、ルールがあります。また、新年のお雑煮に始まり、芋煮会があり、法事があるように食は生活とともにあります。年中行事と密接に関わって料理があります。食とはまさに文化だとわかるとても興味深いお話でした。
ユネスコ登録にあたり、「和食」の特徴として、次の4つがあげられています。
1.多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用
2.自然の美しさの表現
3.バランスがよく、健康的な食生活
4.年中行事との関わり
いかがでしょう、素材の持ち味を生かしているのが和食だ、自然や季節の移ろいを表現しているのが日本文化だ、と私たちは思っていたのではないでしょうか。実際ユネスコに登録しようと活動されたとき、日本が主張したがったのもこの2つだったそうです。けれどもむしろ後者の2つが、日本が誇るべき、世界に類のない、和食の特徴なのですね。村田さんのお話でよくわかりました。
(もちろん前者2つにも和食や日本文化の素晴らしさがとても表れています。ただそれらが”ある”ことではなく、その”方法”が文化です。「素材の持ち味を生かそうとしない料理はなく、その方法が日本人の感覚と異なるために素材を生かしていないように感じれるだけです、季節をもつ文化であればそれを慈しんでいます」と村田さんもおっしゃっていました。)
さいごに、質疑応答で私たちにアドバイスもくださいました。
たとえば、かつおぶしを削ってだしをとれないなら、パックでいい、だしがなくてもいいんです。ハンバーグを食べるなとは言わない、ハンバーグにおひたし、ご飯、お味噌汁、おつけものをつければ和食になります。京都の菊乃井もいらしていただきたいけれど、赤坂にもありますし、百貨店で味も楽しめます。
日本人にとって日本食はいちばん、つくりやすい料理なはず。むずかしく考えすぎなくていいんですよ。料理には、こうでなくてはならない、はない。できるかたちでいいんですよ。
和食。私たちの毎日の食、私たちの文化。もっともっと誇っていい。そしてもっともっと大切にしたい。そう思いました。(湯川真理)
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