KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2005年12月06日

新たな経済モデルが求められている 細田衛士さん 「グリーンキャピタリズム」

先日の「サンデープロジェクト」で、金のリサイクル事情の特集がありました。金は地上で最も希少性の高い資源でありながら、すでに採掘可能な埋蔵量の7割近くを掘り出してしまっているという危機感もあって、携帯電話やパソコンのマザーボードなどさまざまな製品廃棄物から、些少な金を取り出してリサイクルしている様子が放映されていました。金の延べ棒1本のうち30%がそうやって再利用された金で出来ているとか...
きょうの細田先生の講演では、金のリサイクルシステムをグリーンキャピタリズムの先駆者として紹介されていました。


講演は、20世紀の資本主義が人類の生物学的な環境対応力をはるかに越えるスピードで発展しているという話題から入りました。その発展がもたらした恩恵として、我々は飢えから解放され、豊かで清潔な文化的生活を実現し、長寿化を獲得できました。社会主義とのイデオロギー対決を決した要因でもある「市場原理がもたらす豊かさ」でもあります。
しかし、別の面からみれば、20世紀の資本主義は自然を搾取することで成り立ってきたという側面もあるとのこと。19世紀の資本主義が労働者を搾取することで成立していた裏返しとして、マルクス主義という新しい経済モデルを産み出したように、自然の搾取は新たな経済モデル=グリーンキャピタリズムの構築を促すはずだというのが細田先生の主張です。グリーンキャピタリズムとは、環境保全に配慮して尚かつビジネスとしも儲かる次世代型ビジネスモデルといえるでしょう。
しかしながら、残された時間はわずかしかありません。地球温暖化、土壌汚染など地球はすでに悲鳴をあげています。ブラジルの森林破壊やアジアへの産業廃棄物の輸出などに見られるように、自然の搾取が、強い国が弱い国の自然を壊すという歪んだ形で進行しているからです。
細田先生によれば、グリーンキャピタリズムへの取り組みは開始されているそうです。
低公害車などの先進的技術開発、エコデザインや環境配慮設計などソフト分野の改善が話題になっていますし、CO2排出量の減少、産廃埋め立て量の削減も顕著だとそうです。いずれも日本がリード役を果たしているとのこと。環境保全のための各種法制化・制度化は着実に進み、政府によるコントロールがはじまっているといえます。
とはいえ、更なる進歩がないと、環境破壊のスピードにはかなわないようです。
細田先生は、そのためには民間主導の循環型経済社会の確立が早急に望まれると考えています。つまり、環境配慮だけでなく、ビジネスとしても儲かるモデルを作ることが継続のために不可欠だということです。資源の開発・生産・流通・消費といった「動脈経済」に加えて、廃棄物の回収・処理・再利用といった「静脈経済」を一気通管の連鎖システムとして組み上げることが必要だということです。
この「新たな経済モデル」を構築するのに最も相応しいのが、資源と国土に恵まれない一方で、高い技術力と勤勉性を持つ日本であるべきだ。そしてそのためには、国・産業界・企業が一体となった戦略的な取り組みにより世界標準=ジャパンモデルを提示しなければならない。細田先生の講義はそう締めくくられました。

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