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夕学レポート

2016年10月18日

リーダーになるのはそれほど難しいことじゃない 日向野幹也さん

日向野幹也あなたの周りでリーダーシップのある人といって思い浮かべるのは誰だろう。同じ会社の直属の上司を挙げる人もいるだろうし、憧れの経営者に思いを馳せる人もいると思う。
早稲田大学大学総合研究センター教授の日向野幹也先生のお話を聞いて、内向的な同僚や影からのサポーター的存在であった先輩だって職場でリーダーシップを発揮していたのだということに気づかされた。 日向野先生が提唱するリーダーシップ像を知った後は、私と同じように隣の席のあの人や、もしかしてあたしだってリーダーであったということに気づいてもらえると思う。


まず、世界標準のリーダーシップは、権限・役職・カリスマ性という要素が備わっているということを前提としない。また、同じ職場や環境において複数の人がリーダーシップを発揮することは自然なことである。リーダーシップは教わることで習得できるものでもある。
リーダーに求められる行動の最小3要素は、1.目標設定(setting the goal) 2.率先垂範(setting the example) 3.同僚支援(enabling others)である。完璧なリーダーはこの3要素を上手に発揮できる人ということになる。目標設定は、短期・長期等の目標を設定することであるが、誰か別の人が言い出したものをリツイートする形でもよく、グループがその目標に対する意識を共有できるよう促進できればOK。率先垂範とは自ら行動を起こすことであり、命令権限があってもこれを行うことで、周囲へ自分のコミットメントを示すことができ、リーダーシップを発揮することとなる。最後に同僚支援では、それぞれの事情を抱える同僚の手伝いをすることであるが、これには感情的なものから物理的なものまでを含む。一般的にこれが得意なのは女性であるといえる。この3つを少しずつでも実行するならば、かなり多くの人がリーダーに当てはまる。こうして、今年の自分のパフォーマンスを振り返ってみると、「あっ、わたしの行動はリーダーとして、それなりにイケてた!」と心の中でそっと微笑むことができる人が少なくないと思う。一方、このリーダーシップの要素が欠けている権限者が何か他人に仕事を振るときには決まって、その権限を振りかざすことであるという。くーっ、あのときのボスはまさにそうだったなぁ、と頷いて共感する人、絶対いるはず!
どうやったらこれらの要素が身につくのであろうか。日向野先生はフィードバックをオススメしている。周囲の人から建設的なアドバイスをもらうのである。ここでのフィードバックとは評価に直結するものではなく、それを意識しないという条件を明確にしておくことで、気を使ったおべっかでもなく、他人を蹴落とすイジワルなものにもならない。あくまで、目標はリーダーシップをとれるようになることである。日向野先生はこの正直な周囲の環境や相手との関係性を悪化させずに、建設的フィードバックを上手にできることが企業の求めるべきコミュニケーション力なのだと説いている。
最後に、職場のあらゆる場面で多くの人がリーダーシップを発揮するとき、権限を持つ上司の役割は、「周囲からの提案(下からの率先垂範)を歓迎しつつ、より上位のミッションを策定すること」と、「下位の者たちがリーダーシップを発揮しやすいように、リソースの配分を決定すること」だという。
先生が在籍されていた立教大学と早稲田大学では、学生にこのリーダーシップを習得してもらうコースを提供していた。アクティブラーニングを実践しているため、授業は各班に分かれてのプロジェクトを主体としており、擬似的な企業課題に挑戦するというもの。この班が小さな職場のように機能し、学生はチーム内で自分なりのリーダーシップを形成することができる。
私は、企業にこのようなリーダーシップを広めるには、評価軸にこの行動要素をきちんと含めて個人の成績にきちんと反映させることがよいのではないかと思う。中堅~上位層の役職に対してきちんとこれを評価対象にすることで、職場の新陳代謝が上がって、仲間を気にかけつつ目標に向かって切磋琢磨するいいチームが組成されるのではないかと思う。先生は、このリーダーシップの達成程度を定量化することはとても難しいが、上記のような要素を満たしているかどうかの指標を設定することで、それを定量的に測ることは可能であるという。
これを評価することの最もいい面は、ワンマンなボスを成敗することではなく、今までともするとサポーター役が多く、より大きなチームを率いるチャンスを逃してきた人を正当に評価できることではないだろうか。チームや企業は率先垂範が得意で突っ走る人ばかりでは成り立たない。次のフォロアーの率先垂範があってこそ、チームメンバー全員が同じ方向を向いて、一つになれるのではないだろうか。先生が在籍していた外資系IT企業のシリコンバレーオフィスでは、マネジャーがディスカッションで発言することはほぼなく、彼女は自分の役割について「チームメンバーのレビューとアドバイス」だと語ったという。ある程度の業界知識や経験があれば、この役割を担うことができる人材は比較的多く存在するのではないか。
日向野先生から目からうろこのリーダーシップ論を教えていただき、私が今までお世話になった先輩方を思い返してみると、これに当てはまると思うのは偶然?にも女性ばかり。女性が輝ける社会を推進するためには、子育て支援のみならず女性の働き方や思考、行動特性をしっかり会社が理解・分析して、会社の仕組みを変えていったらいいなぁと思いました。
(沙織)

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