2011年07月12日
「私のリフレクション」笹島 繁
プロフィール
1967年、葛飾柴又生まれ。バブル後期の1990年に都市ガス会社に入社。営業所配属の後、社内(部門~本社)および出向先の関係会社で、主に人事中心のキャリアを積む。本社では主に新卒採用と人材育成を担当、部門では人事異動や人事制度の運用や労務実務を担務、また関係会社では人事マネージャーというポスト経験と共に、人事処遇制度の改定を経験した。現在は、関係会社である地域密着型販売会社で、経営企画という新たな領域にチャレンジ中。
これまでの経歴から、人事は私のキャリアの柱であるが、特に人への関心が強い、人と関わりが好きという訳ではなく、むしろ対人面ではクールな性格だと思う。人事という仕事に適性があるのかは今も自身でも不明。
ようやく厄年を抜けたものの、体力的な衰えは隠せない。二人の娘(高2、小3)の父(まだまだ頑張らねば)。趣味は週末のテニスだが腰痛のため残念ながら中断中。ゴッドハンドと呼ばれる先生にかかり治療中。
私とキャリア・アーキテクチャー論
約10年前、私は人事部の人材開発部門で、30歳の社員を対象とする「CDP(キャリア開発プログラム)」研修の担当となった。どう研修を設計すべきか?そもそも「キャリア」とは何者か?自分が分からない事を研修の参加者に伝えることはできない。そんな悩みの中、MCCの「キャリア・アーキテクチャー論(以下CA論)」を知り飛びついた。
「CA論」は、キャリア研究に関する第一人者である、金井壽宏先生が全体のコーディネーター。そして毎回、これまた驚くような豪華講師陣を交えた少人数授業の濃密なセッションが計11回繰り広げられた。
また、そこには実に多彩なメンバーが参加し、多様な価値観が存在していた。これまでの経験を活かして起業・転職を予定している人、アカデミックの世界に転じた人、企業にいながらも学会で活躍したり社会人大学院で学んでいる人、等々。プログラムへの参画意欲や議論の質の高さは素晴らしく、毎回のセッションが本当にエキサイティングであった。
そうした中、否が応でも自分自身のキャリアのありかたにも向かい合うことになった。私は入社した時の気持ちを改めて振り返り、「エネルギーを通じて、東京圏という世界的大都市の発展、そしてそこに暮らす人々の生活の質の向上に貢献したい」という理由が何ら色褪せていないことを確認することできた。
その理由が変わらない限りは、今の会社の中で与えられる機会や変化を活かし、楽しみながら挑戦し積み重ねていくのが、私のキャリアの形だと整理することができた。
ひと皮むけた経験
これまでの仕事の中であえて「ひと皮むけた経験」をあげるとすれば、約2,000名を抱える部門の人事担当として携わった人事異動調整であろう。毎年4月に大幅な定期異動が行われる。ポスト者の決定や、全社および部門政策とそれに伴う人的リソース配置、配置する予定のメンバーのバランスや相性、そして勤続年数や健康、通勤、家庭事情などの個別事情の配慮など実にさまざまな変数があり、かつそれらが短期間に同時並行して進んでいく。
そうした中、個々の事案について「この異動は全社のためになるのか?部門のためになるのか?本人のためになるのか?」を日々真剣に考え続けた。そして本社、他部門、部門内の各現場と細かな折衝を続け形にしていった。人事異動の人の流れを示す矢印表(通称:玉突き表)が夢に出てきて夜中に目が覚め、そのひらめきを枕元のメモに書き付けたこともあった(注)メモの8割は自分でも何を書いたのか判読不能で役に立たなかったが(笑)。
当たり前のようだが、「腹を括って真剣に取り組んだ時の覚悟」が「ひと皮むける」ことにつながったと感じている。
キャリアとは何者?
次に私なりの「キャリアの持論」について述べたい。
「CA論」の最終課題のテーマの一つでもあった「私のキャリアの定義」について、当時以下のように記した。
————–
私なりの「キャリア」とは、「幸せな人生」に向かい「人生」の大きな部分集合である「職業人生」に、「生きかた」という、理想に向かい主体的に納得しながら、意味づけしながら前進するという要素を加えた、『職業人生の生きかた』と定義したい。
————–
金井先生が総評の一部で、キャリアというカタカナ言葉を自分の言葉で語る重要性に言及され、実感を伴うわかりやすい言葉での定義として、私の「職業人生の生きかた」をとりあげ『はっとさせられるものがありました』と書いて下さった事は、私にとって何よりも嬉しい出来事であった。
そして年月を経て、今の私のキャリアの定義は、少しバージョンを変えている。我々の職業人としての軌跡は、計画したもの、せざるもの様々な事を含め、想像以上にダイナミックな変化が起きる。そんな中、時点、時点で多くの決断(積極的判断、受け入れること、我慢すること等を含め)を繰り返して現在に至っている。それぞれが重いがゆえに「俺のキャリアはこうだ、文句があるか!」という叫びが聞こえてくる。だからこそ、キャリアとは『職業人生の生きざま』であると再定義したい。
メンターへの感謝
最後に、キャリア上の混沌、悩みの中にいる時こそ、自分の身近にいる人の存在、支えや言葉の大切さに触れたい。
「どんな境遇にあっても腐らず、目の前の今の仕事に精一杯取り組み付加価値をつけて結果を出していけば、それを見て、次の成長の機会を与えてくれる人が必ずいる」と指導してくださった上司。「仕事の報酬は次の仕事」とアドバイスしてくれた同僚。
新しい異動先で仕事にも人間関係にも慣れず苦しんでいた時に「実際に転職した人に比べれば、少しでも知っている人もいるし、仕事を相談できる人もいるのだからラッキーじゃない?大企業って実際には転職しなくてもいろんな仕事ができていいね」と言って私に新しい視点を与えてくれた家族。
感謝でいっぱいである。こうしたメンターの存在もキャリアには不可欠であると改めて感じている。
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