2016年09月13日
難波 克己「リーダーシップ・ストレッチング」について
この秋、私は慶應MCCキャンパスにて「リーダーシップ・ストレッチング」というリーダー達を対象としたアドベンチャー教育プログラムを担当する。
このプログラムで行うことは、以下の引用の示唆する通り、人がリーダーになっていくプロセスを見つめていく旅(Journey)そのものである。
“Leadership has to do with how people are. You don’t teach people a different way of being, you create conditions so they can discover where their natural leadership from.“
Peter Senge
リーダーシップはある意味、人間社会の永遠のテーマと言えるであろう。過去何世紀にも渡り語り継がれ、その真髄を追求してきたトピックである。
いつの時代においても、それは人間がどの環境・状況において何を要求され、何を目指し、求めるかに応じて普遍的な定義が生まれてきている。
過去からよく使われている引用文に、“Leaders aren’t born. They’re made.” という言葉がある。端的に言えばリーダーシップは“How”を追求していくのか?それとも”Be”であるのか?それに応じて学びのプロセスの違いがあると解釈できる。
今回「アドベンチャー教育」という名称を使っているが、本来筆者の思いは「教育」という言葉ではなく、むしろ英語の”Education”という単語のルーツにある「引き出す」ことを示唆している。
人に何かを「教える」のか? それとも個々の生来持っている力を引き出す、あるいは輝かせるのか? リーダーシップを持つ人間がどういうスタンスに立っているかにより、他者へのアプローチの仕方は変わってくる。
現在のビジネス社会ではコーチング、ファシリテーション、リーディングなどの言葉が広がりを見せており、その定義も様々であるように見受けられる。
元来、単語はそれ自体の持つ概念を表現しているとすれば、カタカナの場合はそのルーツを辿ることから本質的な意味が見えてくる。では、リーダーシップは具体的に何かをしようとする人間のタイトルなのであろうか?
「リーダーシップ・ストレッチング」の意味するところは、アドベンチャーと呼ばれるMind Stateを体感しながら、A=感情 B=行動 C=認知を神経科学的(Neural Based)に分析し、人の身につけてきた行動・認識力・感情面のパターンを体験学習で学ぼうとするものである。
つまり、言い方を変えれば、人は自分の知覚している環境の中で精神的な安定を維持しつつ、自己判断あるいは、社会的に許容された行動をとっている。
人の社会性・社会力は、通常は人の創る組織の中で受け入れられる範囲内の行動を選択していると思われる。アドベンチャーベースのアプローチでは、人が人と出会い、ある目的/目標の達成に対してグループを築いていく際に、個々の持っている行動規範や価値観を表す「Full Valueリーダーシップ」と呼ばれているグループプロセシングを体験しながら、課題に対してどのように意思決定をしていくグループ(チームビルディング)の体験ができる。
このプログラムでは二度にわたり、「チャレンジコース」と呼ばれる屋外施設を使用して行うグループワークを実施する。これは大変ユニークなトレーニング手法だ。
アメリカのビジネス「Fortune 500」に選ばれた多くの企業が人事トレーニングにおいてアドベンチャーベースドのプログラムを採用している。
こうしたトレーニングの中で強く実感するのは、「Confort-Zone(心理的安全地帯)」の存在だ。私たちは、日常のあらゆる行動をこの範囲の中で行っている。それが自分にとって不安レベルの低い、心地の良い方法だからだ。
しかし、新たな環境への挑戦や、既にある物事に変化を起こそうとする際には、そこから勇気を持って飛び出さねばならない。その為にも自分の持つ「Confort-Zone」がどのような性質のものなのかを知る事が大切になる。
自身の「Confort-Zone」と向き合うのは難しい。時として、自らの見たくない部分に目を向けざるを得ないこともあるからだ。こうしたトレーニングは普段と異なる環境・メンバー・アクティビティとの関わりを通じて、そうした認知を助けてくれる。
プログラムでは、人のあり方の根源を振り返る“Reflective”で以下のような項目を再考していく。(一部概要)
- 自己の振り返りから自らのリーダーシップを再考する。
- アドベンチャーという概念がどのように個人とグループの成長に与える影響力を持つかを学び、実践に繋げていく方法を追求する。
- アドベンチャーという環境がもたらす個人の変容を考える。
- リーダーシップ及びリーダーシップスキルに関する。
- フルバリューリーダーシップについての学びを深める。
“Coming together is a beginning; keeping together is progress; working together is success.”
Henry Ford
多くのリーダー達のご参加をお待ちしております。
- 難波 克己(なんば・かつみ)
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- 玉川大学 TAPセンター センター長
- 『リーダーシップ・ストレッチング』講師
- 高校卒業後、野外教育、キャンプ、青少年社会教育の経験を生かしてアメリカへ留学。レクリエーション、セラピー、野外教育、スポーツ心理、適応体育学、カウンセリング心理を学ぶ。
1985年ルイビル大学文理学部教育学科卒業、1987年スプリングフィールド大学大学院修士課程心理学科スポーツ心理学、アスレチィックカウンセリング修了、博士課程体育学スポーツ心理学、適応体育学中退、2010年玉川大学博士課程工学研究科脳情報修了。
1995年プロジェクト・アドベンチャー・ジャパン設立。チーフトレーナーとして、その普及と指導者育成に携わる。現在は大学で研究と教育現場における実践活動に注力している。
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