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ピックアップレポート

2017年06月13日

ゆるい強制力

吉原 拓也
北海道大学 人材育成本部

「いい話だった」で終わっていた

セミナーや講演などで、人の話を聞くのが好きです。そして、話を聞くたびに、はっと気づかされたり、感心したり、目から鱗が落ちたりしている、のですが・・・、それらの影響で自分が成長したという実感は、これまであまりありませんでした。

そんなある日、クロシングの受講を始めました。視聴できる動画やアーカイブの数と年会費から計算すると、一本当たりの値段が「そこそこ安い。」と思ったからです。また、これまで、聞きたい講演と用事が重なることが多かったのですが、動画が利用できるならスマホ等でいつでもどこでも好きな時間に見られるのだから、忙しい時期でもなんとかなるだろうとも思ったのです。
実際にクロシングに登録し、何本かの動画を視聴し、ディスカッションにも参加してみると、当初想定していなかった効果があることに気が付きました。

観かえす、聴きかえすことで講演が「自分のもの」に

まず、講演の内容を忘れず、何かある度に思い出せるようになりました。これまでの講演では、聞いたその時には感動するのですが、翌日にはきれいさっぱり忘れていたので、これは大きな進歩です。ただ、これはある意味、当然のことなのかもしれません。従来は聞きっぱなしだったのに対して、クロシングでは講演を視聴する⇒感想を書く⇒ディスカッションする、と3週間に渡って、何度も講演の内容を思い出すので、講演を聞いて感じたこと考えたことが定着するようになったのだと思います。

また、講演で得たヒントを実際の仕事の中で実践できるようになりました(こちらはたまにですが・・)。それは、ディスカッションの中で、「自分の周りではどうだろうか」と考えることが増え、「だったら、まずは自分の職場で試してみよう。」と思うようになったためです。これもやはり3週間ずっと意識することで、今までよりも具体的に考えるようになったのかもしれません。

自分では自分を肯定する内容しか選べない

そして、「モヤモヤ」することが多くなりました。この「モヤモヤ」については、しばらくの間、「なぜモヤモヤする?」「このモヤモヤの意味は?」と、もやもやしていたのですが、最近、「これなのかな?」と思うことを見つけました。それは・・、今まで私が聞いてきたセミナーでは、「自分が好きで、価値を認めるような内容の講演を聞き、それに感動した。」のであって、今までの自分を肯定するような話に感動していたのです。しかし、クロシングは自分ではない第三者が選んだ動画を毎月2~3本見るわけですから、時には自分と異なるものの見方に違和感を覚えたり、その場では消化することができなかったりしたため、もやもやしていたようなのです。

会員の思考が交差するディスカッション

私はもやもやした時にはそのモヤモヤをそのまま感想としてクロシングに書き込みます。私のもやもやした感想の前後には「良かった!」「感動した!!」という他の方々の感想も掲載されていますが、その中に、「私ももやもやしました」とか、「もやもやの原因はこれなのでは?」という感想やコメントが書き込まれることがあります。それらを読むと、「同じようにモヤモヤした人がいたんだ。」と安心したり、それらのコメントから自分一人では気づけない物の見方を学んだりすることができます。

さらに、この頃は、このもやもやした気持ちがとても大事なのではないかと思っています。すぐに結論が出るわけでもないのだけど、自分以外のものの見方を自分に取り入れて成長するきっかけになっているのではないかと思うのです。

「ゆるい強制力」が成長を促す

さて、このレポートを書くにあたって、「クロシングって私にとって何なんだろう?」と考えてみたのですが、それは「ゆるい強制力」なのではないかと思っています。別に期日までに講演を聞かなくたって、感想を書かなくたって、ディスカッションに参加しなくたって良いのだけど、水曜日が近づくとなんとなく聞かなきゃ、感想を書かなきゃ、ディスカッションに参加しなければと思ってしまい、結果として3週間それらの講演の内容について考えてしまう。そして、たまには違和感でもやもやしてしまう。自分で選んだ講演を一度聞くだけでは、なかなかこういう効果がでないのではないかと思います。

クロシングは、自分の好みの延長線上のことを薦めるアマゾンのレコメンドとはちょっと違います。どちらかというと、「これも読んでみたら?」と1万円分の本を選んでくれるいわた書店に似ているように思います。大人になると、なかなか得られない「ゆるい強制力」。それが私にとってのクロシングなのではないかと思っています。

◇こちらもあわせてお読みください:
プログラム体験レポート「思考の交差点で、思わぬ考えに出会う、知的にスリリングな体験」

◇講座詳細:クロシング

吉原 拓也(よしはら・たくや)
  • 北海道大学 人材育成本部
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