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ピックアップレポート

2020年03月10日

坪井 広行『What is Learning? 学びとは何か』

坪井広行
著作家、シンククリエイター、趣味の登山家

あらゆる産業や企業が拠り所にしてきたコンテンツが、意味を失いまるで溶けていくように感じる時代になりました。
こんな時代だからこそ、いまあるコンテンツの意味を問い直し、新しく翻訳していくことが必要なのではないか。「できたらいいね!」で済ませることなく、新たな武器としての「意味を問う」時代が始まったのではないか。そして、いま何を問い直すのかによって、私たちの未来は決定的な違いを迎えるだろう、そう感じています。

デジタル機械が浸透していき創造力の追求が新たな義務となるなかで、私たちはロボットのような仕事をしたくない、人間的な仕事がしたいと思います。しかし、そんな話ではないのです。「創造的であれ、さもなくば必要ない!」と迫られているのです。
私は、この状況を乗り越えるためのポイントはただ一つ「学び」にあると考えています。

未来の予測できない変化に葛藤し、欠点を知り、迷うことは、私たち人類共通の課題です。それを解くためには、変化に対応するのではなく、私たちが抱く常識という未来の扉にかかる鍵をなんとか開き、まず一歩を踏み出すことです。そのために、いままでの学びの領域を飛び出して、そもそも「私たちにとって学びとは何か?」を問うてみましょう。

未来に常識はなく、常識とは常に過去のものなのです。
テクノロジーと組織・チームの未来を展望し、「学びとは何か?」を考えてみたいと思います。

私はいつも迷子でした、迷子だから問いを立てるのです。損か得かを気にすることは、安全を求めることであり、得てして迷いのない道、創造性を失う道を進むことになります。しかし、知は迷いであり、不知は無知なのです。周りにどう思われるかを気にすることは、自分が信じていることを失っていくことでもあるのです。
学びの物語は、私たちの人生におき忘れてきた小さな疑問、そんな疑問を問うことから始まるのです。

そもそもの話をしていこう

みなさんは、働いていてよく勉強している人を見かけませんか。セミナーや研修に参加し、多くの本を読み、朝から朝活に励み、日本人は少ないかもしれませんが社会人大学院に通っている人たちです。なぜなんだろうと疑問に思ったことはありませんか。

資格を取るためなのか、スキルをつけるためか、出世したいのか、それとも起業するための準備や人脈づくり、社会的貢献に向けて、と思いますよね。何かの動機があり目的のために学んでいる人に共通していえることは、人生の意味を問うていることです。

そんなことないよ!と勉強している人は、反論するかもしれません。「そんな難しいこと考えていないよ、時間があったし、仕事で悔しいことがあったから、それとなんとなく将来が不安だしね」と。
私は、たとえどんな資格でも、読書でも、たった一つの研修でも自ら欲していれば、少なからず仕事の意味を問い、それは同時に人生の意味を問うていると思います。

強い日本を目指した明治から、豊かな日本を目指した昭和と平成、これからは「意味を問う」時代を目指していく必要を感じています。
ではなぜ、意味を問う時代なのでしょうか。

一つ目の理由。テクノロジーの進歩により「人間とは何か」を問われ始め、それは人と人の関係性、デジタル機械と人の関係性に影響を及ぼし、人のあり方を変えていきます。テクノロジーの進歩は、経済のあり方を、社会のあり方を、そして人間のあり方を決めているのです。
人のあり方が変われば、人が定義した意味を変えていくのはごく自然なことだからです。

二つ目の理由。外の変化に(後手後手に)対応するリアクション・スタイルを続けていく日本では、多くの人の努力にも関わらず(まるで正解を探し続ける)延命治療のなかに浸りつづけ、痛みなく静かに息を引きとる存在になるのではないかと心配しています。
まるで病気であることを前提としたように治療を探すのではなく、健康体であることに気づき体力・知力をつけていくためには、物事の意味をきちんと問い直す必要があるからです。

三つ目の理由。ビジネスや技術は、こうすればうまく行くといった方程式や参考書の時代は終わりました。裏を返せば、それぞれのやり方があるということです。同じく「物事の意味」についても、それぞれが固有の意味を持つときなのです。
時代の変化は、辞書に載っているコンテンツの意味をアイスクリームのように溶かしていきます。銀行とは何か、といった産業の意味さえ溶けているのです。であれば、組織のリーダーシップやマネジメントの意味についても誰かが語った言葉に頼っていても仕方ありません。それぞれの企業、組織やチームで自ら考えた固有の意味を持つ必要があるのです。

自分の思考で戦う術を手に入れる

意味なんてなんだか重苦しい感じがするかもしれませんが、そんなことはありません。人生の意味はもちろんですが、組織や個人にとっても、社会にとっても意味を問うことは、とても大切で楽しいことです。
なぜなら、意味を問うことは、進むべき方向を示してくれるコンパスを手にすることだからです。それは、他人の思考で戦わず、自分の思考で戦う術を手に入れることです。意味を問いそして問われる限り、人生の舞台は過去ではなく未来にあり続けることができるのです。

私は「学びとは何か?」の意味を問いながら、一人一人が自由な使命感を抱いて、楽しく意味を問う時代を探りたいと考え、『What is Learning? 学びとは何か』を執筆しました。問いを忘れた日本に問いを取り戻したい、自分の言葉で"そもそも"の話ができる、そんな時代を目指していきたいと思います。

どんな種類の学びも、自分らしさを紐解き自身を知ることにつながります。そう考えると、この問い自体が、生命や人間社会の神秘につながる問いのように感じます。

この本を読んでいただきたい人は、「学びとは何か?」に興味がある方はもちろんのこと、ビジネスを推進している方、組織やチームをマネジメントしている方、人の育成に携わっている方などにです。とくに旧態依然とした職場を改革して何か新しいことを見出したい、実行してみたい人に向けた内容です。

見通しにくい時代だからこそ、自らの力で意味を問い直し、森を動かす意思に変えていきましょう。みなさんと一緒に、学びをもっともっと楽しんで日本を元気にしていきましょう。

 

What is Learning? 学びとは何か』(坪井広行著、幻冬舎)の「はじめに」を著者・出版社の許可を得て掲載しました。無断転載を禁じます。

What is Learning? 学びとは何か
著:坪井 広行 ; 出版社:幻冬舎 ; 発行年月:2020年2月; 本体価格:1,200円(税抜)
坪井広行(つぼい・ひろゆき)
  • 著作家、シンククリエイター、趣味の登山家

岡山県倉敷市生まれ。日本電気(株)にて、システムエンジニア(通信事業者システム開発など)を担当、その後、ソリューションコーディネーター、人の育成(1万人のSE)に従事。
現在、テクロノジーの未来を展望し、コンテンツの意味を問い直す時代〝Era Meaning”に、「~とは何か?」を探求しながら、新しい社会のあり方と思考を提案している。
本書「What is Learning?」は、意味を問う時代に「学びとは何か」に答えた最初の著書になる。

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