ピックアップレポート
2006年09月12日
慶應義塾大学知的資産センターの取り組み
慶應義塾大学知的資産センター
1.技術移転活動に対する慶應義塾大学の基本理念
慶應義塾大学は、研究成果の社会への移転を、教育・研究と並ぶ大学の使命と考えています。そして、「慶應義塾大学で生まれた研究成果は、大学にとって貴重な知的財産であり、大学はこれら知的財産の保護と活用を積極的に促進・支援する」という考え方を公表しています。この方針に基づき、知的資産センターは大学の学内組織として、大学の予算で運営されています。したがって、会員制度は採用していません。
知的資産センターは、上図のシンボルマークが示すように、研究成果である知的財産を社会に移転することを通じて慶應義塾大学と社会とを結ぶインターフェースの役割を果たします。そして、慶應義塾大学の研究推進体制を支える他の組織(1.総合的研究の企画・推進を行う研究推進センター、2.受託・共同研究の窓口となりかつ研究者に密着した実務支援を行う研究支援センター、3.義塾の研究成果を社会に移転するためのインキュベーションを支援するインキュベーションセンター)と密接に協力しながら、大学の研究成果を特許等で保護し、その成果を社会に積極的に移転すると同時に、社会での評価を学内に還元して、大学の研究活動のより一層の活性化および拡大を図ります。
学内に対しては
- 特許調査・相談
- 研究成果、知的財産保護・維持・管理
- 共同研究の支援(契約・斡旋)
- 知的財産に関する教育・研究
社会に対しては
- 慶應義塾大学の知的財産移転の実行機関
- ライセンス交渉・契約
- ベンチャースタートアップの支援
- 知的財産・技術移転に関する研究
2.知的資産センターの概要
(1)知的資産センターの技術移転活動
知的資産センターにおける技術移転活動の流れは、以下のようになっています。提案された発明の中で、実用化・技術移転の可能性の高いものを選んで特許化し、技術移転を進めていきます。
発明の特許化から技術移転までを、原則として一人の担当者が一貫して担当していることが、知的資産センターの技術移転活動の大きな特徴です。担当者は、発明の詳細を把握した上で技術移転を実施できるため、きめ細かな対応が可能になります。
(2)研究契約支援
共同研究、受託研究などの各種研究契約において、研究成果である知的財産の扱いは大変重要です。知的資産センターでは、知的財産の扱いも網羅した研究契約書代表例を準備していますが、実際には個別の案件ごとに調整を行いながら、柔軟に対処することが必要です。知的資産センターは、各キャンパスの研究支援センターと連携をとりながら、その調整や支援を行っています。
また、慶應義塾大学では、著作権や有体物などの知的財産の扱いについても、基本的な考え方をまとめた指針を定めています。
(3)インキュベーション支援
大学の知的財産の価値を高めるためには、インキュベーションが不可欠です。インキュベーションのために、資金面での種々の公的支援制度があります。知的資産センターでは、このような公的研究資金を積極的に活用し、インキュベーションの促進を支援しています。
【大学等発ベンチャー創出支援制度:文部科学省】
大学等公的研究機関における4つの分野(ライフ、IT、ナノテク・材料、環境・その他)の研究結果・成果に基づき起業化が期待される開発課題を提案公募形式により募集。採択された課題に対して研究開発に必要な費用及び当該研究成果の事業化に関するマネジメント費用等を助成し、大学等の研究成果の実用化を促進するための制度。
平成14年度は34件の課題が採択され、慶應義塾からは理工学部 田中茂教授の「快適環境を創造する室内空気汚染物質の高性能浄化装置の開発」が採択されました。
【マッチングファンド:文部科学省】
産学官連携の着実な推進の一環として、大学等の優れた研究成果を基にした独創的な新技術やベンチャー企業の創出を図る事を目的とした事業で、企業資金の提供を前提とした共同研究に対してマッチングファンド方式により資金を提供。企業化ニーズと研究シーズが真にマッチした共同研究を促進するとともに、大学で生まれた技術シーズをベンチャー起業につなげるべく、ベンチャーを起こす際の技術になる成果をもたらすと期待される大学の研究者等が行う技術開発や起業に向けた市場調査・事業化計画の作成を行うための支援制度。
【大学発事業創出実用化研究開発事業(通称:マッチング・ファンド):NEDO】
産学連携のより一層の充実(大学研究成果の死蔵解消)と「大学発ベンチャー1000社」計画の一環を背景として、経済産業省にて、平成14年度より開始された事業。大学の研究成果を活用し、産学が連携して実施する実用化を目指した研究開発に対して、企業側が研究資金を拠出すること、事業化計画が明確であること等を要件として、TLO等を通じて、研究開発等に必要な資金の一部を補助する制度で、今年度からはNEDOが事業を引き継いでいます。
【慶應義塾大学の採択事業】
平成16年度
1. 理工学部/三井公之 教授 「三次元運動軌跡測定システムの開発」
2 医学部/末松 誠 教授 「ガス分子による生体高分子機能の人為的制御法の開発と医療応用」
(4)ベンチャー創出支援
知的資産センターは、慶應義塾大学の知的財産をスタートアップ企業に供与することにより、大学としてベンチャー創造への支援を行う活動を行っています。最近では複数のベンチャーキャピタルと連携し、大学発ベンチャー設立の支援も行っています。また、慶応義塾大学の知的財産をもとに企業を設立する場合に、慶應義塾が最大100万円を出資するという極めてユニークな「アントレプレーナ支援資金規定」が設けられています。
(5)知財財産情報の発信
慶應義塾大学の研究成果を社会に発信し、また大学と産業界の知識の融合や連携の場を提供するため、知的資産センターは「慶應イノベーションネットワーク」を主催し、産学連携ネットワークの構築を進めています。また、首都圏以外における産学連携ネットワークを構築するため、「慶應技術移転フォーラム」を開催しています。
慶應イノベーションネットワーク
慶應技術移転フォーラム
(6)教育・研究
知的財産や技術移転に関する理解を深めるため、学部、学年を問わずすべての学生を対象に、知的資産に関する講座「知的資産概論」を三田キャンパスにおいて開設し、毎年各キャンパスから数多くの学生が受講しております。また、理工学部の院生を対象として、知的所有権に関する講座「知的所有権特論」を矢上キャンパスにおいて開設しています。
さらに、ベンチャーキャピタルと連携した「ベンチャープライベートカンファランス」をはじめ、知的財産や産学連携に関するシンポジウムを毎年開催しています。
慶應義塾大学知的資産センターWebサイト http://www.ipc.keio.ac.jp/より転載
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