夕学レポート
2006年08月08日
青木 豊彦 「夢の実現で地域活性化を」
青木豊彦 東大阪市モノづくり親善大使、株式会社アオキ 代表取締役 >>講師紹介
講演日時:2006年5月23日(火) PM6:30-PM8:30
「メイドイン東大阪の人工衛星」の発起人、青木氏はコテコテの関西人です。河内弁の親しみやすい語り口で、地元東大阪への思いを熱く語ってくれました。
さて、青木氏は本題に入る前、まず、青木氏の人生を変えることになった、大切な方との出会いのエピソードを紹介してくれました。当時、青木氏は30歳過ぎ。父親が経営していた工場(当時の社名は「青木鉄工所」)に跡継ぎとして入社していました。
その頃、会社はダイキン工業の協力工場でした。そのダイキン工業で新たにトヨタのカンバン方式が導入されることになり、青木氏の工場でも同方式の導入を進めることになりました。青木氏は、面倒だなと内心思いながらも、カンバン方式の指導のために来た先生を受け入れます。
ところが、青木氏の工場にやってきた先生は、青木氏に開口一番次のように言ったのです。
「私は、青木さんの会社の金庫にお金を入れるために来た。カンバン方式は、そのための手段に過ぎない」
先生は、目的と手段を取り違えてはいけない。青木氏の会社が儲かるという目的のために、カンバン方式という手段を取るのだとおっしゃったわけです。青木氏はこの言葉にとても感激したそうです。この先生の指導はとても厳しいものだったけれども、上記の言葉を聞いていたおかげで、先生の指導に素直に従うことができたと、青木氏は当時を振り返っていました。
そして、本題の人工衛星の話です。
なぜ、中小企業の街、東大阪で人工衛星作りに取り組むことにしたのか。
先ほどのエピソードに沿って言えば、人工衛星作りは手段にしか過ぎません。目的は、地盤沈下の進む東大阪の活性化であり、モノづくりの現場にもっと若者を呼ぶことでした。
東大阪には8000社の中小企業があります。うち90%以上が従業員不足をしています。多くの企業が不景気の影響や、中国などへの生産拠点の移転で苦しい経営を余儀なくされています。日本と中国の賃金格差は、30対1だそうです。東大阪の工場で働く従業員の給料は月30万円、これが中国では1万円です。コスト面で、とても太刀打ちできません。地元の若者も、モノづくりには魅力を感じず、多くが東京に行きたがります。結果として後継者不足に悩み、廃業するしか道は残されていないような状況でした。
幸い、青木氏の会社は、ボーイング社の厳しい審査をパスした認定工場として、航空機部品の製造を主力としていて経営は安定していましたが、中小企業の街、職人の街である東大阪全体として見ると、前述のようにお先真っ暗。街のイメージも、汚いところ、柄の悪いところといったものであり、住民は、東大阪に住んでいることを恥ずかしくて人に言えないという、誇りのもてない街であったということです。
そこで、青木氏はそんな状況を打開しようと自ら発起人となり、2003年から人工衛星の開発に取り組むことになったのです。人工衛星の名称は“まいど1 号”。50cm四方の小さな人工衛星ですが、開発コストが少なく中小企業にも参入の余地がありました。以来、宇宙開発事業団(NASDA)の協力を得ながら、ほぼ完成に近づいているそうです。(ただ、諸事情により、実際の打ち上げはまだ先になりそうだとのことでした。)
この人工衛星打上げ計画は、街の活性化に劇的な効果をしめしました。
人工衛星の街として有名になったおかげで、住民は誇りを持って東大阪に住んでいることを言えるようになりました。また、修学旅行の訪問先となり、子どもたちが工場見学に来てくれるようにもなりました。
青木氏の夢は、人工衛星を皮切りに次々と新たな構想に取り組み、10年後、15年後には、東大阪を「ハイテクの街」にすることです。そして今、青木氏が密かに考えているのは、「無人機」の開発に取り組むことだそうです。
講演後には、これから大阪に帰るというお時間のない中、会場の方全員と名刺交換をされるなど、出会いを大切にされている青木氏のお人柄が感じられました。
推薦図書
『経営指針で会社が伸びる―魅力ある会社の条件』 丸山博著、旬報社、1991年
推薦サイト
http://www.aoki-maido.co.jp/profile.html 株式会社アオキ
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