KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

私をつくった一冊

2023年02月14日

磯辺 剛彦(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 ビジネス・スクール教授)

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

磯辺剛彦
 

磯辺 剛彦(いそべ・たけひこ)
  • 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 ビジネス・スクール教授

慶應MCC担当プログラム
  • 経営戦略-イノベーションと競争戦略(2022年度)

1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください

流通革命―製品・経路および消費者―
林 周二
中公新書
1962年11月

2.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

私が林周二先生と出会ったのは25年前、流通科学大学(神戸市)に勤務していた頃です。この大学はダイエーの創業者である中内㓛が設立された学校で、林先生は特別教授として招聘されていました。研究室が向かい合わせだったこともあり、週に一度東京からお見えになると、必ず「磯辺君、一緒にランチはいかがですか?」と声をかけていただいていました。恥ずかしながら、そのときは林先生がご高名であることを知らず、「どんな分野がご専門で、どんな本を書かれているだろう?」と思い、図書館で『流通革命』を借りました。

3.どのような内容ですか?

林先生がこの本を書かれたのは、東大教養部の助教授で若干36歳、1カ月足らずで書き終えたそうです。この本は高度成長期の日本経済のボトルネックが経路(チャネル)部門の遅れにあり、その近代化が日本経済の喫緊の課題であることを指摘しています。しかし「流通革命」というインパクトのあるタイトルが一人歩きし、流通革命=問屋不要論という表面的なものとして解釈されました。しかし林先生は、「世の中の変化が速く、その変化の速さに対応できない企業が淘汰されることを伝えたかった」と残念そうに言われていたのが印象的でした。

4.この本をおすすめするとしたら?

環境の変化について行けない企業が淘汰されることは経営の鉄則です。今はVUCAの時代だと言われています。そのような時代にあって、私たちは変化の本質をどのように読み取るのか、そのような環境変化において10年後、20年後の自社のあるべき姿をどのように想像するのか、その達成のための課題とは何か、どのような方針で変化に対応するのかなど、『流通革命』はそのための指南書になるはずです。

磯辺 剛彦

磯辺 剛彦(いそべ・たけひこ)
  • 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 ビジネス・スクール教授

慶應MCC担当プログラム
  • 経営戦略-イノベーションと競争戦略(2022年度)

1981年慶應義塾大学経済学部卒業、株式会社井筒屋入社。1991年慶應義塾大学経営学修士、1996年慶應義塾大学経営学博士。
1996年流通科学大学商学部助教授、1999年教授、2005年神戸大学経済経営研究所教授を経て、2007年経営管理研究科教授。この間、1997年にスタンフォード大学ビジネススクールに客員研究員として留学。
1999年中小企業研究奨励賞(商工総合研究所)、2003年Best Paper Proceedings: Academy of Management Meeting、2004年Winner: Best Paper Awards, Asia Academy of Management Conference、2006年Winner: Best Paper Awards, Asia Academy of Management Conference.
メルマガ
登録

メルマガ
登録