私をつくった一冊
2024年04月08日
齋藤 卓爾(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授)
慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。
- 齋藤 卓爾(さいとう・たくじ)
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- 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
- 慶應MCC担当プログラム
1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください
2.どのような内容ですか?
城山三郎さんによる「財界の鞍馬天狗」と呼ばれ高度成長期の日本経済を牽引した中山素平さんの伝記です。この本に限らず「雄気堂々」「男子の本懐」「落日燃ゆ」「官僚達の夏」など城山三郎さんの本に強い影響を受けました。城山三郎さんの本には政治家、官僚、経営者から一介のサラリーマンまで様々な人物の苦悩、そして気概・生き様が描かれています。当時の産業や企業の状況、そして組織の実態も臨場感を持って伝わってきます。
3.その本には、いつ、どのように出会いましたか?
初めて読んだのは高校生の時でした。当時、私は世界史などが好きな一方で、ぼんやりと理工系への進学を考えていました。しかし、城山三郎さんの本を読み、産業や企業というものに触れ、そのダイナミズムに魅力を感じ、経済学部に進みたいと考える様になりました。また、城山三郎さんが出身であったことから一橋大学に惹かれるようになり、一橋大学経済学部に進学しました。
大学2年生になったある日、母から電話がかかってきて、城山三郎さんのサイン会があることを知らされました。先着100名とのことで私は早めに会場である日本橋の丸善に向かいました。今でもよく覚えているのは並んでいるのがスーツを着たオジサンばかりだったことです。初めて見る城山三郎さんは想像通りに厳しい表情をしておられ、何もお話しすることは出来ませんでしたが、「運を天に任すなんて 素描・中山素平」にサインをいただくことができました。
4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?
城山三郎さんがきっかけで進学した一橋大学には商学部があるためか、経済学部では企業に関する授業は少なかったです。そのためどのゼミに所属するか悩んでいましたが、偶然にもゼミに入る年に企業経済学を研究しておられる小田切宏之先生が着任され、その後、学部・修士・博士・ポスドクと9年にわたりお世話になることになりました。そして今はビジネスパーソンの方々を対象としたファイナンスやM&Aに関する講座を担当しているのですから、人生は様々な出会いにより形作られていると思わざるを得ません。
残念ながら城山三郎さんの本の主人公の方にお会いしたことはありませんが、「外食王の飢え」のモデルとされている江頭匡一さんが創業されたロイヤルホスト(現ロイヤルホールディングス)の会長である菊地唯夫さんに、毎年授業で講演いただいています。講演のお願いに伺った際、「これが「あの」ロイヤルホストの本社(東京本部)か」、と思いました。
5.この作品をおすすめするとしたら?
高校生や大学生の頃は、城山三郎さんの本に描かれている産業、企業や組織の実態に興味を惹かれましたが、今読み直すと様々な登場人物が苦悩しながらも、気概を持ち、自らの生き様を追求している点により強く惹かれます。先を見通すのが難しい中、何に基づいて意思決定をすれば良いのかと考えている方々に読んでいただきたいです。
- 齋藤卓爾((さいとう・たくじ))
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- 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
- 慶應MCC担当プログラム
- 2000年一橋大学経済学部卒業、2001年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2004年博士課程単位取得退学。2006年博士(経済学)(一橋大学)取得。2004年~2007年日本学術振興会特別研究員(PD)、2007年京都産業大学経済学部講師、2009年准教授、2012年慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授、2023年4月より同教授。
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