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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

私をつくった一冊

2024年08月13日

平井 孝志(筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 国際経営プロフェッショナル専攻教授)

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

平井 孝志

平井 孝志(ひらい・たかし)
  • 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 国際経営プロフェッショナル専攻 教授

慶應MCC担当プログラム

1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください



人は変われる-大人のこころのターニングポイント
高橋 和巳 (著)
三五館
2014年12月(ちくま文庫)

2.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

この本は、もともと1992年に三五館から出版されていたものですが、その後、2014年にちくま文庫から再度出版されているようです。私がこの本と出会ったのは私が2010年頃、ちょうど40半ばの頃でした。いわゆる「中年の危機」に差し掛かる頃のことです。当時コンサルティング会社に身を置き、忙しくとも非常に充実し、それなりに活躍していた時期なのですが、私も例にもれず、漠然と「このままでいいのだろうか」という感覚が日増しに強くなっていた頃でもありました。そんな時にこの本を手に取ったのです。

3.どのような内容ですか?

この本の主題は、自分自身の「主観性」を取り戻すことがいかに大事かということでした。年齢を重ねるにつれ、良くも悪くも自分の前に厳然と立ちはだかる客観的な世界に圧倒されるようになります。どうしようもない客観的な世界があるのでそれを受動的に受け入れてあきらめてしまうのか、それとも、それらを受け入れた上でもなお自分らしく主観性を取り戻して立ち向かっていくのか。そんなことを問い続けている本でした。

4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?

この本との出会いは、その後ずっと、「人生とは何か」「どう生きるべきか」について考え続ける姿勢に影響を及ぼしました。もともと哲学的なことを考えることが好きな自分でしたが(あ、でも大学時代の専攻は物理でした…)、自分の人生をという具体的な実在を通して、日々の小さな出来事、喜怒哀楽を眺めるようになっていったと思います。私はほとんど講演会などのヒトの話を聞きにいかないタチなのですが、この著者の講演会には参加したほどでした。

5.この作品をおすすめするとしたら?

お勧めしたい人は、
(1)40代~50代のまさに油がのって活躍しているビジネスマン⇒今の活躍が所与のものとして続くという幻想を一旦立ち止まって異なる角度で見つめ直すことで、何か想定外の事象が起こった場合に対してきっと力を与えてくれるはずです。
(2)「中年の危機」の真ん中にいると感じられる方⇒純粋に今一度生き直す力をもらえると思います。
(3)60代前後の方(ちょうど私と同じくらいの年齢)で、「さぁ第二の人生をどうしようか」と不安に思われている方⇒答えは自らみつけるしかありませんし、私自身も死ぬまで悩み続けると思うのですが、人生そういうものだ、そのままでいいのだと、少しは心が落ち着くかもしれません。

平井 孝志

平井 孝志(ひらい・たかし)
  • 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 国際経営プロフェッショナル専攻 教授

慶應MCC担当プログラム

東京大学教養学部基礎科学科第一卒業、同大学院理学系研究科相関理化学修士課程修了後、ベインアンドカンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックスコーヒージャパン(経営企画部門長)、株式会社ローランド・ベルガー 執行役員 シニアパートナーなどを経て現職。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院MBA。博士(学術)。コンサルタント時代には機械/電機メーカー、商社など幅広い業界において、全社戦略、マーケティング戦略の立案・実施などに豊富なコンサルティング経験を持つ。
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