KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

私をつくった一冊

2024年09月11日

佐藤 正明(株式会社慶應学術事業会 代表取締役社長)

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

佐藤 正明(さとう・まさあき)
  • 株式会社慶應学術事業会 代表取締役社長

1.私をつくった一冊をご紹介ください


逆転の発想
糸川英夫 (著)
ダイヤモンドタイム社/プレジデント社
1974年

2.どのような内容ですか?

戦闘機「隼」を開発し、戦後、「ペンシルロケット」に始まるロケット開発や宇宙開発を先導し、「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と呼ばれた糸川英夫氏の著作です。当時ベストセラーとなるとともに「逆転の発想」という言葉を世に広めた作品で、特に、60代以上の方々には懐かしく響くのではないでしょうか。

1967年に氏が設立した組織工学研究所というシンクタンクで開催されたセミナーを元に編集された作品で、企業経営、新商品開発、コンサルティング、プロジェクトなどでの実践を通して組織工学を研究される中で、広範な課題、問題を取り上げ、多くの指摘、提言、予言をされています。

この度の機会に久しぶりに著作を開いてみましたが、1974年の初版発行から既に50年が経過しているにもかかわらず、記載されている内容は、今でも多くの点で色褪せることがありません。
「80年代の新商品開発」の項では、「宇宙科学的マーケティング・リサーチ」や「ハイエスト・バリュー・リサーチ」と名付けた科学的マーケティングのアプローチを取り上げ、発行から10年後にあたる「エネルギー1985年」の項においては「太陽エネルギーの可能性、石油より安いエネルギーはない、原子力発電の挫折、エネルギーの自給自足化、新しい技術の象徴:燃料電池、家庭水素化の時代」を提言、予言されていたことに今更ながら驚きを感じます。

3.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

大学入学後、本屋に立ち寄った際、店頭に並べられていたベストセラー作品ということで手にとったものと思います。

4.それはどんな出会いでしたか?

長い「受験勉強」におさらばし、「社会勉強」の手始めとして手にとったと思いますが、読み始めてみると、さまざまな事象、社会問題等を広範にとりあげ、わかりやすく解説されており、続編、続々編と続く3連作をいっきに読んだと記憶しています。
当時はこのような、社会を俯瞰し、様々な課題、問題をとりあげ、科学的視点で掘り下げた、科学者によるわかりやすい作品はめずらしかったと思います。受験勉強で砂漠化した頭と心に浸み込んでいったのでしょう。受験時代に忘れを告げ、大学生活に切り替わるよい架け橋になってくれました。
様々な課題を投げられたことで、その後の読書、学習にスムーズにテイクオフできたものと、今更ながら感謝しております。

5.この作品をおすすめするとしたら?

発刊から既に50年が経過する今でも色褪せることなく、時に新たな視座となることがあると思います。
昨今の著作とは異なる視点、掘り下げによる解説はむしろ新鮮に感じることが少なくないと思いますので、新たなアプローチへの出会いを求めている方にはお勧めします。目から鱗となるかもしれません。

佐藤 正明(さとう・まさあき)
  • 株式会社慶應学術事業会 代表取締役社長

1983年 慶應義塾大学経済学部卒業
1983年 ニチメン株式会社(現、双日株式会社)に入社 電子電機機器部等に所属
1991年 慶應義塾に入社 塾監局経理部、信濃町キャンパス経理課、医学部企画室、人事課、月ヶ瀬リハビリテーションセンター等を経て、義塾の経営改革プロジェクト室に参画。病院経営改革等に従事し、2019年より現職。
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